2016年2月4日木曜日

東南アジアマーケットってどこですか インドネシア出張記

タイトルは「フィンランドはどこですか」 by 谷山浩子にインスパイアされて。谷山浩子の作詞とタイトルのセンスは天才だと思う。あんまり本編と関係ないけど。「冷たい水の中を君とあるいていく」というタイトルも好きだ。今改めてタイプしてみると、どことなく現代のラノベ風なのに驚く。時代がようやく谷山さんに追いつきつつある、ということか。何の話をしようとしたんだっけ。そうそう、東南アジアマーケットがうんたらという話を、AECの絡みもあってよく耳にするので、うだうだ書こうと思っていたんだった。

去年もそれなりに出張に出た。毎回色々あるが、なかでも思い出深いのはジャカルタ出張だ。東南アジアで随一の安全な環境で、ぬるま湯に浸かりきって生活している我々シンガポール駐在からすると、ジャカルタはまるで魔境。聞く話聞く話、まるでネットで有名なヨハネスブルグのコピペみたいな話ばかり。いわく、宿泊している高級ホテルから、道を挟んで向かいにあるショッピングモールに歩道橋を渡って買い物に出たら歩道橋の両側からやってきた男達に挟み撃ちにあって金品を巻き上げられただの、ただ一度通したキャッシュカードでスキミング被害にあっただの(前に書いたが)、渋滞がとにかく酷く、毎朝毎晩、道がお盆の時の東名高速道路みたいになっているだの、何かわからんがとにかくヤバイ感じだ。

何となくお鉢がまわらずに今まで過ごしていたが、とうとう出張に赴くことが決まった日、まずはジャカルタに駐在している大先輩にメールで連絡を取った。なんだかんだ言って現地にいる人に聞いてみると、別に変なところに行かなければ普通に安全だよ、的な返事が来ることも多いので、そういうちょっとした安心感を期待して。戻ってきたのは、A4用紙2枚にもわたる、入国からはじまる各種アクティビティに関するガチな注意書きの数々。こんな感じだ。入国時には、イミグレーションで必ず実際に入国のスタンプが押されているか、フリだけしていないか確認をすること。スタンプを実際には押さずに、出国時にいちゃもんをつけて賄賂を請求する手口が発生している。新品に近い電化製品などはいちゃもんをつけられて関税を請求されたり巻き上げられる可能性があるので持ってこないこと。タクシーは必ずシルバーバードという会社か、最低でもブルーバードという会社のタクシーに乗ること。それ以外に乗るとぼったくられたり連れ去られたりするリスクがある。道は絶対に出歩かないこと、バイクで来てひったくりにあうため。などなど。もうドン引きしたよね。しかもそのメールを送ってくださった後、やはり不安だと思ったのか、迎えを送るので空港から出ないように、とのこと。マジで一体どんなところなんだジャカルタ。

その後も、英会話の先生(若い女性の先生)に出張の話をしたら、「本当に気をつけたほうがいいわよ。私の父も、アメリカに行くと言っても中国に行くといっても何も反対しなかったけど、ジャカルタに行くと言った時には絶対にダメだと言って出してくれなかったわ」と心配される、迎えに来てくださる駐在の方が卵にあたって一週間寝込んでいたためなかなか連絡が取れず、など不安感を煽られるイベントが着々と発生、旅行気分を盛り上げてくれた。別に頼んでませんけどそんなの。

そんないやな緊張感に包まれつつとうとう渡航。さぞや色々なことが発生したに違いないと思って、人の不幸はなんとかの味的な意味合いでワクワクしながら読んでくださっている方にはガッカリさせて申し訳ないが、結論としてはトラブルらしいトラブルもなく、無事平穏に過ごして帰ってくることができた。入国時夕方のピーク時間で、しかもうっかり欧米からの大型便の着陸と鉢合わせたことでイミグレーションを通るのに2時間かかった事以外は空港でもスムーズだったし(これが他の空港で発生してたらカンカンに怒っているだろうが、ジャカルタな時点で、ああ、長く待たされるだけで無事に入国できてよかった、という気分になっている)、ちゃんと歯磨きもうがいもペットボトルでしていたおかげで、お腹を壊す事もスタバでアイスラテを飲んでやられた以外はなくて大丈夫だったし(氷がダメだったらしい、ホットにしておけば。。)、道はそもそも出歩かなかったのでひったくりにも遭わずに帰る事ができた。種々の忠告をくださった大先輩には感謝してもしきれない。

街並みも思ったより近代的で、よくあるアジアの街並み、という感じだったが、治安が悪いのは本当のようだった。アジアでは、治安の程度を知る一つの目安として、ショッピングモールの入り口のセキュリティレベルを見ることで、どの程度安全なのかあるいは危ないのかを知る事ができる(と私は思っている)。治安が比較的良い国では、ショッピングモールの入り口は基本ノーガード(あっても万引き防止ゲートくらい)だ。シンガポールなどがこれに該当する。ちょっと危ないようだと、ガードマンが立っていて、それより危ないと、空港にあるような金属探知機のゲートが設けてある(例えばバンコクの多くのモールがこのパターン)。そしてそれよりももうちょっと危ないと、ゲートとガードマンに加えて犬がいる。ヤク的な意味合いで。訪問した国で、ガードマン、ゲート、犬の三点コンボが揃っていたのは今の所マニラとジャカルタくらいだ。海外旅行に出て、ショッピングモールがこんな様子だったら、外を出歩くのはよほど気をつけたほうがいいし、できたら歩くのはやめたほうがいい。残念ながら地上には治安の悪い地域はまだまだ多いし、トラブルに巻き込まれないために用心を重ねるにしくはない。

道はまぁひどかった。バンコクもひどいがそれを体感1.7-8倍にした感じ。いわく、ジャカルタ市民が持っている車を全部だして道に並べると、ジャカルタの道の面積よりも大きくなるとか。でも市内の交通手段は実質車(バス含む)か、バイクしかない。なにそれ破綻してる。お客様先に連れて行ってもらったが、午前中に出て午後過ぎについて軽く打ち合わせをして帰るともう夕方という塩梅。ここにいるとずっと車に乗っているみたいだ、と駐在している大先輩もぼやいていた。

今東南アジアが熱い!みたいな掛け声がよく聞こえてきて、東南アジアマーケットを攻略するには、みたいな言説を耳にしたりするけど、シンガポールからたった二時間飛んでみるだけで、アジアはアジアでも本当に国ごとに状況はまるで違う、という当たり前の現実が目の前にある。でもそういうことを実際に訪れずに肌感覚で知る事はできないし、知りもしないマーケットを攻略することなんて、本当の意味ではできないと思う。自戒も含めて、東南アジアマーケット攻略がどうたら、という話を聞いたり、自分が言い出しそうな時には眉にべったり唾をつけた方がいい。それって、いったいどこですか。という意味合いをこめて。そんなことを強く感じたジャカルタ出張だった。

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